田舎もん大学生のネパール日記

休学して一年間ネパールでインターンしている大学生のブログです。

なぜ算数を学ぶの?ネパールと日本のカリキュラム比較から読み解く

 ナマステ〜
 
昨日はナンパ失敗から学んだ大切なことについて書きました。
 
私は今ネパールで算数教育、特に小学校低学年の児童を対象にした基礎計算力向上のために活動しています。

 

 

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基礎計算力向上って言葉が難しくてわからない・・って方もいると思うので、
 
私がネパールで何をやっているのかは後日ブログでお伝えします。
 
 
皆さんは自分が受けてきた日本の算数教育の目標って何か知っていますか。
 
 
私たちは10年ごとに変わる「学習指導要領」というものに則って国語や算数を教えられます。
 
 
その最新バージョンである新学習指導要領(平成29年)によると、算数の目標は
 
数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学的に考える資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
 

(1) 数量や図形などについての基礎的・基本的な概念や性質などを理解するとともに,日常の事象を数理的に処理する技能を身に付けるようにする。

(2) 日常の事象を数理的に捉え見通しをもち筋道を立てて考察する力,基礎的・基本的な数量や図形の性質などを見いだし統合的・発展的に考察する力,数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したり目的に応じて柔軟に表したりする力を養う。

(3) 数学的活動の楽しさや数学のよさに気付き,学習を振り返ってよりよく問題解決しようとする態度,算数で学んだことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。

 
このように記載されています。
 
それぞれ
(1)が知識及び技能
(2)が思考力・判断力・表現力等
(3)が学びに向かう力、人間力
 
を表しています。
 
私は、小学校の算数といえば「掛け算九九の暗記」や「百ます計算」のイメージが強いです。
 
なんか計算ばっかりさせられていたなと思う方もいると思います。
 
 
しかし日本の算数教育は九九や百ます計算のような知識・技能だけでを教えるに留まりません。
 
 
算数的な思考力や学ぼうとする態度を養成することも目標になっているんですね。
 
 
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ネパールの算数教育の目標とは?

さて、一方ネパールの算数教育はどうでしょうか。
 
 
教育省管轄のカリキュラムデベロップメントセンターが公表しているネパール暦2063年(西暦2006年)の 算数教育の目標を見てみます。
 
※現在はカリキュラムが変わっていますが、最新の資料が見つからなかったため今回は私が見つけた中で最新のものをお伝えします。
 
 
まず、前段でネパールの社会的背景と教育カリキュラムの関係を以下のように記述しています。(以下原文とともに日本語訳もつけます)
 
In our context, it is found that some of the children enrolled at the primary leveldrop school without completing this level and among those who complete it somedo not get themselves enrolled to the lower secondary level to continue theirstudies. There may be several reasons behind this. Therefore, it would be moreappropriate to formulate policy on what to include in the curriculum by keeping inmind the actual cause of dropouts. In order to give continuity in studies, and makeeducation realistic, curriculum should be developed according to the need andinterests of the students.
 
子供達の中には小学校を卒業できない人もいれば、卒業しても中学校で勉強を続けられない人もいる。そのため、学校を退学せざるおえない子供を考慮した上でカリキュラムを作成する必要がある。継続的な学習のため、そしてより実用的な教育を提供するためにカリキュラムは生徒のニーズと興味の応じて作られるべき。
 
学校を退学せざるおえない子供を考慮したカリキュラム設計はネパールならではといますね。
 
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それでは算数教育の目標を見てみましょう。
 
  • Develop minimum mathematical knowledge, skill and attitude to solve theproblem that arises while carrying out the daily activities even for the studentswho leave the school after completing grade 5.
  • 5年生を終了した後中学校へ進まない生徒のために日常生活をする中で生じる問題を解決するための最低限の数学的知識、技能、態度を身につける。
  •  
  • Develop necessary mathematical knowledge and skill needed as the bases forthe students joining grade 6 after completing grade 5.
5年生を終了後中学校へ進学する生徒のために数学の基礎となる知識や技能を身につけるため
 
見てわかるように目標が2つに分かれています。
 
一つは、5年生を終了したあと中学校へ進まない生徒のための記述、
 
もう一つは、5年生を終了後中学校へ進学する生徒のための記述です。 
 
 
中学校へ進学しない生徒のためには日常生活で生じる問題を数学的に解決するために必要な知識・技能の習得が目標となっています。
 
例えば、120円のチヤを2つ頼んで、300円渡した時のお釣りはいくら?のような計算ができるようになりましょう、ということです。
 
 
中学校へ進学する生徒のためには日常生活で必要な知識技能に加えて、より高度な数学的知識や技能の習得が目指されます。
 
どちらの目標にも共通しているのは「知識」「技能」に焦点を置いているということです。
 
 
日本の算数教育の目標を思い出してください。
(1)知識及び技能に加えて(2)思考力・判断力・表現力等 (3)学びに向かう力、人間力等がありましたね。
 
 
つまりネパールの教育は学びを応用して算数的に物事を考えてみよう!ということではなく、
 
 
まずは日常生活に必要最低限の数学的な知識を身につけて、学校から離れたとして生きていけるような力はつけましょうというスタンスだと考えられます。
 
 
これはカリキュラム上だけでなく、私が現場で先生の授業を見ていても実感します。
 
 
生徒が自分で思考する時間があまりなく、とにかく先生の言うこと書くことをノートに書く。ひたすら九九表をノートに書く。そういった授業が一般的です。
 
 
算数的に物事を考えることより、算数的スキルが第一に求められます。
 
 
ただし日本が良くてネパールが悪いということはありません。
 
 
国の経済状況や文化的背景から社会から求められているスキルは異なるからです。
 
 
しかしネパールの国が発展していくために、「自分で考える力」は必要なのかなと。
 
 
算数の問題にしても、「あれ、なんでこうなるんだろう?」って疑問を持てるような
 
 
また先生も生徒に考える余地を与えられる授業をすることが今後大切かなと。
 
 
そう思っている最近です。
 
 
日々実践あるのみです。
 
 
 
ではまた明日。